キャッシュレス社会の進展が著しいスウェーデンで、国家が発行する仮想通貨「e-クローナ」の導入が進められています。
参考ページ:e-クローナ – 2019年中の運用テストを計画
同通貨は2019年にパイロットテストが行われ、2021年に完全リリースされる見通しです。「e-クローナ」は国家が主体となって仮想通貨を発行する一大プロジェクトであり、他国からも注目を集めています。
キャッシュレス先進国・スウェーデンの現状
スウェーデンは北ヨーロッパに位置する国家で、現金の使用量が少ないキャッシュレス先進国として知られています。北欧諸国は現金の利用を段階的に廃止し、代わりに決済アプリなどを普及させるという長期目標を共有していますが、その中でもスウェーデンは特にキャッスレス化が進んでいます。
例えば、2015年時点の国内GDPに対する現金の流通量を見た場合、日本は19.4%、アメリカは8.5%であるのに対して、スウェーデンは1.7%です。つまり、国内の経済規模に対して現金流通量が極端に少ないのです。
スウェーデンで高度なキャッシュレス化が進展した理由は複数あります。例えば、若者の間ではSwithと呼ばれるスマートフォン用決済アプリがよく使われていますし、クレジットカードやデビットカード(口座から即時引き落としされるカード)の保有率も高いです。
こうした取り組みが進んだ結果、スウェーデン内では「No Cash(現金払いお断り)」を掲げる店舗が増え、有料の公衆トイレにカード読み取り端末が置かれるようになり、銀行が多額の現金を取り扱わなくなったので銀行強盗は大きく減りました。
e-クローナの仕組み
e-クローナは、スウェーデンのキャッシュレス化をさらに進展させる可能性を秘めた、国家が発行する仮想通貨です。基本的にはスイスの法定通貨であるクローナをそのまま仮想通貨にしたものです。
e-クローナはスイスの中央銀行であるRiskbankが手動するプロジェクトであり、2019年中にパイロットプログラムを行い、2021年に完全リリースする予定です。
e-クローナは仮想通貨の特徴である取引履歴の改竄にしにくさや速い送金速度と、法定通貨の特徴である信頼性の高さを兼ね備えています。位置づけとしてはあくまでも「国家が管理し、規制する法定通貨」であり、ビットコインのようなものとは大きく異なります。
まずは現金と併用する形で導入され、その後次第に現金からe-クローナへと移行していく予定です。
キャッシュレス化の功罪
キャッシュレス化が進んだスウェーデンでは、銀行強盗が大幅に減少し(2008年110件→2011年16件)、支払い記録が残ることによって脱税が減り、確定申告は簡単になり、スムーズな会計をもたらすようになりました。
参考ページ:スウェーデンのキャッシュレス化がもたらすメリット
一方で高速なキャッシュレス化の進展は、新しい技術についていけない人たち(主に高齢者)が適応できなかったり、停電や端末の故障のリスクがあったりと言ったデメリットもあります。こうした自体が起こった際に、一部の民間企業に多大な責任が行き過ぎる危険もはらんでいます。
Riskbankもそういったデメリットについては把握しており、「我々が最大限の責任を持ってデジタル決済への取り組みを進めていく必要がある」とコメントしているものの、具体的にどのような取り組みを行うかは不明瞭です。