日本仮想通貨交換業協会は2018年9月12日、第5回会合を開催しました。会合には金融庁や日本銀行、銀行協会、財務省などから計35名が出席し、約100名が傍聴しました。
奥山泰全会長は会合内で具体的な自主ルールの概要について説明しました。具体的には匿名通貨の取扱い禁止や4倍以上のレバレッジの規制、安全な資産管理のためにやるべきことなどが明かされました。これらの自主ルールは早期に施行される予定です。
信頼回復を目指す仮想通貨業界
日本仮想通貨交換業協会は、2018年3月に登録済交換業者16社が立ち上げた自主規制団体です。
2018年1月のコインチェックでの仮想通貨流出以降、交換業者やみなし業者の資産管理、顧客保護体制の問題点が次々と明らかになっており、同協会は問題点の解決、業界内の信頼回復に取り組んでいます。
自主ルール策定もその取り組みの1つで、ルールを明確化することによって市場に安心をもたらす狙いがあるものと思われます。
自主ルールの内容
COINTELEGRAPHの記事によると、今回の会合で明かされた主な自主ルールは以下の通りです。
新規通貨の取り扱いと匿名通貨の原則禁止
仮想通貨交換業者が新規通貨を取り扱う場合は、金融庁の審査の前に、協会の審査を受けることになりました。
また、匿名性の高い仮想通貨、追跡が難しい仮想通貨(匿名通貨)は、マネーロンダリングや違法な品の取引に使われる可能性が高いことから、原則として取扱を認めないことになりました。
DASH、Monero、Zcashなどの匿名通貨は今後、日本の仮想通貨取引所では購入できなくなる見通しです。
つまり、DASH、Monero、Zcashなどを取り扱うには、海外取引所を使う必要がありそうです。
レバレッジ取引は4倍まで
レバレッジ取引は、少額の証拠金を預けることによって、その数倍~数十倍の額の取引ができる仕組みです。
例えばレバレッジが10倍の場合、1万円の証拠金で10万円分の取引ができます。レバレッジが大きいほど、利益も損失も大きくなります。レバレッジ取引はハイリスクハイリターンであり、仮想通貨の激しい価格変動の要因とも指摘されていることから、協会はこれを4倍に制限
します。
現状、多くの仮想通貨取引所は5~25倍を上限としていますが、今後引き下げられる見通しです。
ICOは協会が事前に審査
ICOは、事前にプロジェクトチームがトークンを販売することによって資金を集める仕組みです。プロジェクトチームは資金を得られ、投資家は将来の値上がりが見込めるトークンを安く購入できるというメリットがあります。
一方で実現性が低かったり、資金だけ集めて消えてしまうようなプロジェクトも見られたことから、協会はICOに関する事前審査を行うようになるので、投資家のリスクを低減します。
資産保護体制の構築
仮想通貨を管理するためのウォレットは大きく、ホットウォレットとコールドウォレットに分けられます。
ホットウォレットはインターネットに接続されたウォレット、コールドウォレットは接続されていないウォレットです。ホットウォレットは利便性が高い半面ハッキングのリスクが有ることから、ホットウォレットで管理する通貨の上限を設定します。仮想通貨の大半をコールドウォレットで取り扱うことによって、万が一の際の被害を低減します。
また、内部担当者の不正を防止するため、マルチシグ(複数人の署名が必要な仕組み)などの措置を講じます。
規制で今後はどうなる?
上記の規制が実行された場合、市場には少なくない安心感がもたらされるはずです。それは今まで仮想通貨への投資に消極的だった投資家、特に機関投資家を呼び込むことにつながるかもしれません。
一方でこれらの規制に対応するためには多くの資金が必要であることから、それが用意できない交換業者は淘汰されていくものと思われます。資力に難がある仮想通貨交換業者が淘汰されるのは投資家にとっては望ましい一面もありますが、リスクにもなりえます。
利用する仮想通貨交換業者は、慎重に決めましょう。