2017年は、ビットコインをはじめ仮想通貨の価格が急上昇しました。その影響で、最近では仮想通貨への投資に興味をもつ人が増えてきました。スタートアップにとって資金調達がしやすいICOという手法も浸透してきて、仮想通貨業界は投資家にとってホットな業界となっています。
しかし、ICOは詐欺が多く、法整備も十分でないためリスクも大きな商品と言えます。ICOに対して各国でも規制をはじめました。今回は各国のICOへの法規制と日本の動向についてまとめましたので、ご覧ください。
そもそもICOとは?
そもそもICOとはなんでしょうか?ICOはイニシャルコインオファーリングの略で、新規に仮想通貨を発行し、資金調達する方法です。IPOの仮想通貨バージョンと思って頂ければいいでしょう。
ICOは株と違って、取引所などの第三者を仲介しないため、企業側からすればコストを抑えられ、画期的な手法です。しかし、その参入のしやすさ故に、詐欺目的のICOも沢山あります。仮想通貨は目に見えないため、詐欺師にとっては扱いやすいシロモノなのでしょう。
中国
中国は2017年9月4日に、ICOを全面的に禁止すると発表しました。その影響で、仮想通貨は軒並み下落したのを、覚えている方も多いのではないでしょうか?
中国が規制をかけたのは、2つ理由があります。
1つは、ICOの詐欺が多いので投資家を守るため。もう1つは、ICOは世界中投資家が参画できるため、自国の仮想通貨が海外に入出しないようにするため。中国の本当の狙いは後者にあると思われます。自国の富が海外に持っていかれるのは、面白くありません。中国の規制は合理的と言えます。
アメリカ
2016年6月17日、アメリカでThe DAO事件と呼ばれる大きな事件がありました。この事件の影響を受けて、アメリカでは認可のないICOは規制する動きになりました。中国のように全面的に規制するほどではないですが、法規制のないICOに対して、慎重な姿勢をみせはじめました。とはいえ、具体的な法律が施行されたわけではなく、具体的な法整備はこれから動きだしていくようです。
The DAO 事件
「The DAO」というのは、「自律分散型投資ファンド」のことで、イーサリアム上で設計され、独自のトークンを発行して資金調達を行なっていたプラットフォームです。簡単にいうと、ICOの先駆け的なサービスです。イーサリアム上で動かすために、独自トークンを購入するためには、ETH(イーサ)を買う必要がありました。ベンチャーキャピタルの要素とクラウドファンディングの要素を併せ持ち、当時は画期的なプロジェクトでした。
投資家から注目を集め、50万ドルの募集に対し、1.6億ドル(150億円)もの出資が集まりました。この影響で、イーサリアムの価格も急上昇。ところが、The DAO事件が勃発します。DAOがハッカーの攻撃を受けて、360万ETHが盗まれてしまったのです。当時の価格で65億円ほどの大金です。
集まった出資額150億円の、その3分の1以上を盗まれてしまったのです。The DAO事件は大きな論争を呼び、この事件をきっかけに、イーサリアムのブロックチェーンをイーサリアムとイーサリアムクラシックという通貨の2つに分岐させるという事態にまで発展しました。
カナダ
2017年8月25日、カナダ証券管理局(CSA)はICOに対して、監督する必要があると発表。内容は、ホワイトペーパーの内容について問題があるとし、登録の内容を満たしているかといったところに焦点を当てて、取り組んでいくようです。
ICOに対して、一方的に規制の目を光らせるというよりは好意的、柔軟な姿勢を見せています。ICOやブロックチェーンの革新的技術の良いところは取り入れて、国内のイノベーションにプラスに働く ICOは認めていく考えのようです。
香港
香港の証券取引所委員会(SFC)もICOに対して規制する動きを2017年9月4日付けで発表。トークンを発行して資金調達するICOは「有価証券」となる可能性が高いとし、証券として認められた場合、香港企業がICOトークンを発行する際には、香港証券取引法が適用されることになります。
香港は中国のように全面禁止にするのではなく、他の先進国と同じように独自トークンが有価証券にあたるかどうかを見極めて投資家を守る比重が大きく、ICOの仕組み自体を否定的にとらえてはいないようです。
ロシア
ロシアもICOや仮想通貨に関する規制への動きがあります。仮想通貨・ICO規制に関する法律草案を2017年12月28日に財務省とロシア銀行合同会議へ提出。2018年3月末までには国家会議で採択され、施行される見込みです。
ロシアははじめ、ICOには否定的で、全面禁止する方向で動いていました。しかし、世界的なICOの普及とポテンシャルの高さゆえに、全面禁止はすべきでない、と判断しました。プーチン大統領もICOには好意的なようです。(参考:仮想通貨ニュース.com)
韓国
2017年10月、韓国の金融委員会(FSC)はICOを全面的に禁止すると発表しました。さらにデジタル通貨の信用取引も禁止すると発表。ICOは投資家が詐欺や市場操作の影響を受けやすく、リスクが高いために、禁止という判断に踏み切ったようです。FSCは「今後の状況を見て規制を改善していく」と述べています。
シンガポール
シンガポールの中央銀行とMAS(シンガポール通貨金融当局)は、「‘A Guide to Digital Token Offerings(デジタルトークンの手引き)」という文書を公表。ICOに関する規制ガイドを発表しました。
このガイドラインでは、SFA(証券取引法)においてICOを規制されるべきとし、証券法が適用される事例を紹介。しかし、ICOは様々であるため、状況によって判断すると明言しています。規制はするものの、ICO活動は保護し、多くの投資家が安心して参加できるような環境の実現を目指しています。
日本
われわれ、日本ではICO規制についてはどのような取り組みがされているのでしょうか?
2017年4月に、「改正資金決済法」が可決され、世界で初めて仮想通貨をお金として認めました。これはとても画期的なことです。それにともない、投資家を保護する観点から、仮想通貨取引所は国への登録が必要となりました。仮想通貨に対しては前向きな姿勢を見せています。
ICOについては、金融庁のホームページなどでリスクについての注意喚起がされていますが、具体的な法規制にまでは至っていません。日本も他国と足並みを揃えながら、対応していくと思われます。
まとめ
ICOを完全に禁止している先進国は中国、韓国のみで、他の国は規制しながらも法規制はこれから徐々におこなっていく、というところが多いようです。ICOは、2017年になってその名を知られるようになりましたので、法整備はまだまだこれからでしょう。
ICOは活気的なシステムです。しかし、黎明期ゆえに悪用されるリスクが高いのも事実。今後、法整備が進み、本当に良いICOのみが残っていく世の中になれば、仮想通貨の流通も増えていくことでしょう。日本だけでなく、各国のICO規制にアンテナをはっておく必要がありそうですね。