2018年現在、ビットコイン(BTC)が抱えるいくつかの問題点

2018年にビットコインが抱える問題点

2018年4月上旬現在、仮想通貨の中で最も時価総額が高く、決済手段として浸透しているビットコイン。一方で、ユーザー数や取引高が急増したことに伴い、従来は目立たなかったビットコイン特有の問題点も顕在化しました。

後発の仮想通貨はこれらの問題点への対策がなされていることから、最近はビットコインからアルトコインへの資金流出も進んでいます。

2017年初頭頃まではビットコインのドミナンス(全仮想通貨の総時価総額に対する、特定の仮想通貨の時価総額の割合)は概ね80%を超えていましたが、2018年4月時点では40%程度にまで落ち込んでいることが、急速な資金流出を証明しています。問題点を解決できなければ、時価総額1位からの陥落もありえます。

今回はビットコインが現在抱えている問題点と、それを解決するための技術や取り組みについて解説いたします。

ビットコイン(BTC)が抱える問題点

ビットコインが抱えている問題点はいくつかありますが、その中でも特に大きいのは以下の4つです。

  • スケーラビリティ問題
  • 51%攻撃
  • 頻発する分裂
  • 貧弱な消費者保護体勢

スケーラビリティ問題

スケーラビリティ問題とは、ビットコインのブロックサイズが1MBに制限されていることによって発生する、送金詰まりや取引手数料の高騰などの問題のことです。

ビットコインの場合、新規ブロックは概ね10分に1回のペースで生成されます。新規ブロックはその直近に生成されたブロックに接続されます。各ブロックにはトランザクション(個別の取引)やハッシュ値、ノンスなどの情報が格納されます。この中でも大半を占めるのがトランザクションです。

ビットコインが今よりもずっとマイナーだった時代は、10分あたりのトランザクション数も極めて少なかったため、ブロックサイズが1MBしかなくても十分事足りました。しかし、ビットコインの普及に伴って10分あたりのトランザクション数が急増すると、ブロックサイズが1MBでは明らかに足りなくなってしまい、送金詰まりが発生するようになりました。

ビットコインは送金時に手数料を設定することができ、この手数料を増やすほど送金にかかる時間が短くなることから、送金手数料も高騰しました。これらの問題をまとめてスケーラビリティ問題といいます。スケーラビリティ問題はビットコインのコア開発者やマイナーの間ではかつてから問題視されており、ビットコインコミュニティ内では多数の解決案が提案されました。

その中でも有力だったのは「ブロックサイズを大きくする」案と「トランザクションを圧縮する」案です。最終的に前案の支持者はブロックサイズを8MBにしたビットコインキャッシュをビットコインから分裂させる形で誕生させ、後案の支持者はビットコインにSegwitという技術を導入し、ビットコインのトランザクションを圧縮することになりました。

しかし、Segwitは現状では十分にうまく働いているとは言えず、決済手段としてはビットコインキャッシュのほうが優秀に見えます。

望まれている解決策

ビットコインの送金詰まりを劇的に解決する技術とされているのが、ライトニング・ネットワークです。ライトニング・ネットワークとは、ビットコインのブロックチェーンでなく、その外側(オフチェーン)で取引を行えるようにする技術のことです。

この機能が搭載されれば、送金詰まりは解消され、さらに送金手数料も劇的に低下します。送金手数料が安くなることによってマイクロペイメント(少額決済)も現実的なものになります。詳しくは「ライトニング・ネットワークとは?」を参考にしてください。

前述のSegwitは単体でもそれなりに機能しますが、今後ライトニング・ネットワークを搭載させるための足がかりでもあります。

51%攻撃

51%攻撃とは、特定のマイニンググループが計算能力の過半数を支配した際に起こりうる攻撃のことです。計算能力の過半数を支配したマイニンググループは、正当な取引を拒否したり、不正な取引を承認したりできるようになります。

51%攻撃の解説の前に、まずはビットコインの採掘の仕組みについて解説いたします。ビットコインはProof of Work(PoW)という仕組みを採用しています。これは簡単に言えば、非常に複雑な計算を早く解いたコンピュータに承認作業を行う(新規発行分と手数料を得られる)権利が与えられる仕組みです。

PoWの仕組みのもとでは、早く計算を解くための競争が生まれます。計算を早く解くためには、高性能なコンピュータを大量に用意する必要があります。必然的にマイニングに参加できるのは、高性能なコンピュータを大量に用意できるマイニンググループに限られます。この参入障壁の高さはマイニングの寡占化を生んでいます。

BlockChain.infoによれば、2018年4月20日時点で最も大きな計算力を持つのはBTC.comで、その割合は27.2%です。以下Antpoolが15.1%、SlusPoolが12.1%で続いています。現時点では計算能力の過半数を支配しているグループはありませんが、仮に上位3位のマイニンググループが結託すればその割合は54.4%となり、過半数を超えてしまいます。

仮に特定のマイニンググループが過半数の計算力を支配した場合、そのマイニンググループは今後生成されるブロックをほぼ自由にコントロールできるようになってしまいます。

ビットコインのブロックチェーンはたまに意図せず分岐することがあります。ほぼ同じタイミングで2者が計算をとき終えた時には、このようなことが起こります。この場合、どちらか一方のブロックチェーンを優先的に伸ばすことによって正当なものとみなし、もう一方のブロックチェーンを不正なものとして排除します。

特定のマイニンググループが過半数の計算力を支配するようになると、意図的に不正なブロックチェーンを伸ばし、正当なブロックチェーンを排除することが可能になってしまうのです。

  

望まれている解決策

残念ながら現状、51%攻撃に対する有向な対策はありません。そもそも対策をする必要がない、という意見も広く見られます。51%攻撃はそもそも割に合わないからです。

51%攻撃を行うためには、まず過半数の計算能力を持つ必要があります。そのためには、多数の採掘用コンピュータを購入しなければなりません。他のマイニンググループもコンピュータを増強している中で過半数の計算能力を手に入れるためには、莫大な先行投資が必要です。

それに対して得られるものは不正な取引を行う、あるいは正当な取引を拒否する権利です。確かに小さくない権利ですが、先行投資に見合った利益が出る可能性は極めて低いです。

そもそも51%攻撃をすればビットコインの信頼性は大きく下がり、それに伴ってビットコインの価格も大幅に下がるはずです。価値が下がったビットコインを不正な取引の承認で手に入れても、大した利益にはなりません。

そんなことをするよりも、現状持っている計算能力を維持したまま採掘に参加して新規発行分のビットコインを得てビットコインの信頼性向上に協力したほうが、よっぽど大きな利益を得られます。仮に悪事に手を染める場合でも、51%攻撃などせずに、仮想通貨取引所に対してハッキングを仕掛けたほうが大きな利益を得られるはずです。

51%攻撃では他人のビットコインを奪ったり、過去の取引を改ざんしたりすることは出来ないため、得られる利益も限定的なものになってしまうのです。

ただ、そう入っても警戒は必要です。実際に51%攻撃が起こらなくても、51%攻撃が行える環境が整っただけで、市場は敏感に反応するはずです。時々Blockchain.infoのページを見て、各マイニンググループの計算能力を把握しておいたほうがいいでしょう。場合によっては売却を検討したほうがいいかもしれません。

頻発する分裂

仮想通貨は法定通貨と違って電子データであるため、分裂することがあります。分裂とは簡単に言えば、もともとの仮想通貨の基本的な性能は同じで、細かい部分が異なる新しい仮想通貨を誕生させることです。ビットコインはアルトコインと比べて分裂が頻繁に起きており、これが問題となりつつあります。

仮想通貨は法定通貨と違って、リリース後もアップデートできるのが大きな魅力です。しかし、アップデートがいつもすんなり成功するとは限りません。どのように仕様変更するかで対立することはしばしばあります。対立した場合にはまずは話し合いでの解決を試みますが、話し合いが決裂することもあります。

その場合は、ビットコインを本家のブロックチェーンから分裂させて、その両方のブロックチェーンを機能させることによって解決を図ることがあります。それぞれの言い分を形にした仮想通貨をつくって、あとは市場で競わせるわけです(通常、ブロックチェーンが分岐した場合は長い方のみが正当と見なされ、短い方は削除されますが、分裂の場合は意図的に両方を正当とみなします)。

例えば、2017年8月1日に誕生したビットコインキャッシュは、ビットコインから分裂して誕生した仮想通貨です。ビットコインキャッシュは「ブロックサイズを大きくする案」の支持者がつくったもので、ビットコインは「トランザクションを圧縮する」案の支持者がつくったものと言えます。ただし、もともと両者は同じ仮想通貨だったので、基本的な部分(ブロック生成時間、発行枚数と発行ペースなど)は同じです。分裂時には、ビットコイン保有者に対して、その保有量に応じたビットコインキャッシュが付与されました。

分裂自体はすべての仮想通貨に起こり得ることです。例えばアルトコインの代表格であるイーサリアムも過去に分裂を起こしており、その際にはイーサリアムクラシックが誕生しています。

しかし、ビットコインの分裂回数は他の仮想通貨とは比べ物にならないくらい多いです。何回分裂しているかはもはや正確に数えることが出来ませんが、代表的なものだけでも

  • ビットコインキャッシュ
  • ビットコインゴールド
  • ビットコインダイヤモンド
  • スーパービットコイン
  • ビットコインプラチナム

などがあります。

分裂が起こること自体は悪いことではありませんが、分裂の回数があまりに増えると、仮想通貨をよく知らない人たちからの印象は悪くなりますし、対立したら分裂すればいいという安易な発想に至りやすくなります。

望まれている解決策

ビットコインの分裂を抑制するためには、ビットコインのステークホルダー同士の意見のすり合わせが必要になります。ビットコインのステークホルダーには

  • コア開発者
  • マイニンググループ
  • 仮想通貨取引所
  • 利用者

などがいますが、中でも特に存在感が大きく、対立を起こしやすいのがコア開発者とマイニンググループです。ビットコインキャッシュももとを辿れば両者の対立によって生まれたものです。仮に分裂するとしても、そこに至るまでの話し合いは十分に重ねてほしいものです。

貧弱な消費者保護体勢

ビットコインの利用者の保護体勢は十分に整っているとは言えません。ビットコインを始めとする仮想通貨を資産として見た場合、その保護体勢は、預貯金や株式、債券、あるいはFXなどと比べてずっと貧弱です。

例えば、日本の銀行に預金していた場合、その銀行が倒産していても1000万円までは保証を受けられます。この制度を「ペイオフ制度」といいます。また、FX会社には信託保全(顧客から預かった資産をFX会社自身の資産とは区分した上で、信託銀行などに預ける)の義務があるため、万が一FX会社が倒産しても資金は保たれます。信託銀行もその預かった資産を信託銀行自身の資産とは別に区分して管理しているため、信託銀行が倒産しても資産は保たれます。

一方、仮想通貨取引所に仮想通貨を預けていた場合、その仮想通貨取引所が倒産したら、原則として預けていた仮想通貨は返ってこないと考えたほうがいいでしょう。仮想通貨取引所の資産に余裕があれば返ってくる可能性はありますが、余裕があるならばそもそも倒産していない可能性が高いです。最近は預けた資産の一部を保証する仮想通貨取引所も出てきていますが、基本的に保証はないものと考えたほうがいいです。

望まれている解決策

適度な規制を設けることによる解決が図られています。日本の場合は、仮想通貨取引所を登録制とすることによって、経営状態に難がある仮想通貨取引所を市場から締め出そうとしています。一定の効果は上げている一方で、認可された仮想通貨取引所に対しても業務改善命令が下されるなど、まだまだ発展途上な面が強いです。

また、規制の内容は国や地域によって異なります。中国のように仮想通貨取引が全面的に禁止されたところもあれば(ただし富裕層は海外の口座を用いて取引を行うなどしているようです)、欧州諸国のように具体的な規制や取引停止などは行わないところもあります。仮想通貨は国際的な取引ができることも大きな特徴であるため、国際的なルールの制定も望まれます。

まとめ

ビットコインには

  • スケーラビリティ問題
  • 51%攻撃
  • 頻発する分裂
  • 貧弱な消費者保護体勢

のような問題点があり、それぞれの解決が図られています。問題点の根本的な解決にはまだまだ時間がかかりますが、このような問題点を乗り越えた時、ビットコインの価値はより一層高いものになるでしょう。

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