時価総額ランキングで長年2位の座をキープしているイーサリアムを筆頭に、多くのプラットフォームに搭載されている機能の一つが契約を自動化する「スマートコントラクト」です。という極めて利便性の高い機能であり、その将来性の高さが注目されています。
今回は、スマートコントラクトの機能やできることなどを見てみましょう。
目次
スマートコントラクトとは
スマートコントラクトとは、自動的に契約を実行する仕組みのことです。イーサリアムをはじめとするスマートコントラクトが搭載されたプラットフォームでは、取引履歴とは別に契約の定義と、それが成立する条件をブロックチェーンに記載できます。その条件が満たされたときに、定義に従って自動的に契約が実行されます。
スマートコントラクトの仕組み
スマートコントラクトが搭載されていないビットコインなら、ブロックチェーン上に「AさんがBさんに10BTC送金した」という取引履歴のみが記載されます。

一方、イーサリアムなら「AさんがBさんに10ETHを送ったら、BさんはAさんに商品を渡す」と言ったような契約内容まで記載されます。

実際にAさんがBさんに10ETHを送ったら、Bさんは自動的にAさんに対して商品を渡すのです。この仕組みにより、Aさんは「お金を払ったのにBさんが商品を送ってくれない」リスクを心配する必要はなくなり、Bさんは「商品を送ったのにAさんがお金を払ってくれない」可能性を心配する必要はなくなります。
安心して他者と高額な契約を結ぶには、第三者の仲介が欠かせませんでした。住宅取引を例にとれば、不動産会社に契約内容を確認して、お互いが裏切れない状況を作り出してもらうことによって、安心して取引をしていたわけです。ここにスマートコントラクトを導入すれば、第三者の介入は不要になります。第三者の介入が不要になれば、手数料も発生しませんし、人を挟むことによってかかる時間や手間も節約できます。
取引の省力化に大きく貢献するスマートコントラクト
ブロックチェーンに記載された情報は、それを記載した本人も含めたすべての人が参照できて、なおかつ誰にも改ざんが著しく難しいという特徴があります。契約の条件はより細かくすることも可能なので、複雑な契約も安心して行えます。

自動販売機は「お金を入れてボタンを押す」という条件が満たされると、ボタンに応じた商品が出てきます。自動販売機はスマートコントラクトを初めて実現した機械であり、スマートコントラクトを使うことで電子的な自動販売機を誰でも作れるのです。
例えばアーティストは自身の楽曲を電子的な自動販売機で売れば、その売上の殆どを自分のものに出来ます。これまではCDの売上の殆どはレコード会社やCDショップなどに取られており、アーティスト自身の取り分は1%程度でしたが(参考:http://www.3on3live.biz/hint/cd.htm)、スマートコントラクトを使えばそのようなことはなくなります。
スマートコントラクトを備えた仮想通貨の一覧
通貨名 | 時価総額 |
---|---|
イーサリアム(ETH) | 6兆8776億円(2位) |
ネオ(NEO) | 5366億円(10位) |
ネム(NEM) | 3804億円(14位) |
リスク(LISK) | 1400億円(22位) |
スマートコントラクトを搭載しているプラットフォームは多数ありますが、現時点で時価総額が高いものを抜き出すと上記のようになります。
イーサリアム以外で最も有名なのはおそらくネオ(NEO)でしょう。中国版イーサリアムとして知られているネオは、使えるプログラミング言語の多さが最大の特徴です。コインチェックのGOXで有名になったネムですが、本来は優秀なプラットフォームであり、優秀なセキュリティと扱いやすいコンパクトさが魅力です。
同様にリスク(LISK)はプログラム言語としてJavaScriptを使用しているので間口が広く、サイドチェーンを搭載することによって処理性能を向上させています。
具体的にどういったことに活用できるのか
スマートコントラクトの実際の活用事例や、将来の可能性を見てみましょう。
難民支援
2017年には国連世界食糧計画(WEP)が、ヨルダン国内のシリア難民を対象にイーサリアムのスマートコントラクトを用いて食料を支援する実証実験を行いました。
実証実験では虹彩認証によって難民認定をして、そのデータをイーサリアムに記録することで、難民は食糧の配布拠点に行くだけで、食糧を受け取ることができました。「食糧をまだもらっておらず、かつ食糧の配布拠点に来た」という条件を満たした人にのみ、食糧が配布されたわけです。一度食糧をもらった人がもう一度配布拠点に来ても、食糧を受け取ることは出来ません。
WEPは実証実験を参考に効率的で公平な難民支援の体制を確立して、2030年までに世界中のすべての食糧難を解決することを目指しています。
医療(Bowhead Health)
Bowhead Healthは、医療分野とブロックチェーンを結びつけることによって、医療をより効率的で安全かつ安心なものにするためのプロジェクトです。
Bowhead Healthは多様化する患者のニーズに合わせた医療を提供するためのプロジェクトであり、ブロックチェーンとスマートコントラクトを最大限活用して、より患者の満足度を高めます。
Bowhead Healthで開発されたデバイスは、インターネットに常時接続されて、どこでもそのデータを参照できます。健康データに変化がある時には必要に応じて医師の診察を受けさせたり、投薬ペースを変更したりできます。「健康データに変化が生じた」という条件を満たした場合のみ、診察や投薬ペースの変更が行われるわけです。
医療分野に関するデータはセキュリティも重要であり、Bowhead Healthは情報の開示の有無をユーザが選択できるようにすることによって対処しています。現時点ではモバイルアプリの開発が行われており、患者はこのアプリを通じて健康状態の確認、投薬スケジュールの設定などを行います。
音楽配信(Ujo music)
イーサリアムを活用した新しい音楽配信サービスとして期待されているのがUjo musicです。ブロックチェーンとスマートコントラクトを用いて著作権管理をより効率的にするとともに、アーティストの取り分を大きく増やします。
「音楽代金に相当する金額のイーサ(イーサリアム内で使われる仮想通貨)を支払う」という条件を満たした場合のみ、ユーザは音楽をダウンロードできます。この仕組みでは、仲介者が存在しないので、アーティストの取り分を大きく増やすことが可能です。
保険契約事務の簡素化
東京海上日動火災保険とNTTデータは2017年4月に保険証券業務へのブロックチェーン技術適用に関する実証実験を実施して、業務の効率化に成功したことを発表しました。
実証実験ではブロックチェーンを用いてスマートコントラクトを導入したことで業務時間が大幅に減少したことで顧客満足度も上昇するなど、大きな効果を得ました。
銀行業務の業務簡素化
りそなグループのりそな銀行は、株式会社デジタルガレージや弁護士ドットコム株式会社とともに、2018年2月より、銀行業務簡素化のスマートコントラクトシステムの実証実験を行っています。
銀行業務システムには、顧客の個人情報を守る高いセキュリティ性と、いつでも滞りなく稼働する安定性が求められます。実証実験では個人向けローン業務を大幅に簡素化し、安価な手数料と素早い手続きの実現を目指すとしています。
ゲーム(イーサエモン)
イーサエモンは、イーサリアムネットワーク上に構築されたゲームです。遊び心地こそポケモンに似ていますが、管理者が存在せず、スマートコントラクトに記述された内容のみを淡々と処理していくのが大きな特徴です。
捕まえたモンスターは育成や戦闘ができるだけではなく、他のユーザとイーサを通じて売買できます。イーサは仮想通貨取引所で他の仮想通貨や法定通貨に換金できるので、ゲームで稼ぐことを実現しているのです。今後はイーサエモン以外にもスマートコントラクトを用いたゲームが多数開発される見通しです。