ハードフォークとは、仮想通貨の技術改善・仕様変更などの、互換性のないアップデートのことです。最近はビットコインの影響でハードフォーク=分裂というイメージを持たれることが多いですが、ハードフォークはあくまでもアップデート、ルール変更です。ルール変更の結果仮想通貨が分裂することもありますが、分裂しないこともあります。
目次
ハードフォークとは?
ハードフォークとは前述の通り、互換性のない技術改善・仕様変更などのことです。

仮想通貨はデジタルデータなので、発行したあとも状況に応じて改善・変更が可能です。法定通貨だと例えば印刷に不備があった場合などにすべて回収しなければなりませんが、仮想通貨ではそのような必要はないのです。
ハードフォークでは、仮想通貨をさらに使いやすく、あるいは安全なものにできます。例えば、長年仮想通貨の時価総額ランキングで2位を維持しているイーサリアムの場合は、最初に以下の4段階の大きなハードフォークの計画を立て、それに従って技術改善・仕様変更を行っています。
- 第1段階:フロンティア(2015年7月30日実行。イーサリアムの基礎を作る)
- 第2段階:ホームステッド(2016年3月15日実行。イーサのを取引が可能に)
- 第3段階:メトロポリス(2017年10月実行。PoWからPoSへの移行準備)
- 第4段階:セレニティ(2018年実行予定。詳細不明)
また、2016年7月には、THE DAO事件と呼ばれるイーサリアム大量流出事件が発生し、それに伴ってイーサリアムクラシックと呼ばれる新しい仮想通貨が誕生しました(詳細はイーサリアムクラシックの記事にて解説)。これは予定していなかったハードフォークです。このように、仮想通貨は必要に応じてハードフォークを行うことによって、より使いやすく、しかも安全なものへと近づいています。
ハードフォークと分裂の違い
ハードフォークは仕様変更、分裂は仕様変更に伴う新しい仮想通貨の誕生です。ハードフォークしたからと言って必ず分裂が起きるわけではありませんが、分裂のためには原則としてハードフォークが必要になります。
ソフトフォークとの違い
仮想通貨のアップデートには、ハードフォーク以外にもソフトフォークというものがあります。どちらも仮想通貨の仕様変更という点では同じですが、ハードフォークは互換性のないアップデート、ソフトフォークは互換性のあるアップデートです。

ハードフォークはソフトフォークと比べて影響力が大きく、その性能を大きく改善する可能性がある反面、コミュニティの反感を招きやすいというリスクもあります。ソフトフォークは低リスクで性能をそれなりに改善できるため、比較的多くの仮想通貨で行われています。
過去に行われたビットコインのハードフォーク一覧
仮想通貨の代表格であるビットコインは、過去に何度もハードフォークを起こしています。前述の通り、ハードフォークしたからと言って必ず分裂するわけではないのですが、ビットコインにおいてはハードフォーク≒分裂と言っても過言ではないほど多くの分裂を起こしています。今までに行われたハードフォークによって、以下のような新しい仮想通貨が誕生しています。
ビットコインから分裂して誕生したコイン
通貨名 | 通貨単位 | 発行日 |
---|---|---|
ビットコインキャッシュ | BCH/BCC | 2017年8月1日 |
ビットコインゴールド | BTG | 2017年10月24日 |
ビットコインダイヤモンド | BTD | 2017年11月24日 |
ユナイテッドビットコイン | UBTC | 2017年12月 |
スーパービットコイン | SBTC | 2017年12月12日 |
ライトニングビットコイン | LBTC | 2017年12月23日 |
ビットコインゴッド | GODC | 2017年12月25日 |
ビットコインキャッシュ
ビットコインキャッシュはスケーラビリティ問題を解決するための仮想通貨です。ビットコインのスケーラビリティ問題(ブロックサイズが1MBしかないことにより発生していた送金詰まりや送金手数料の高騰などの問題)を解決するために作られたもので、ブロックサイズが8MBとかなり大きいことが特徴です。
比較的最近できた仮想通貨ながら、ビットコインの知名度とその性能のおかげか時価総額は高く、2018年4月26日時点での時価総額ランキングで4位につけています。
ビットコインゴールド
ビットコインゴールドは、ASIC耐性を持つ仮想通貨です。ビットコインのマイニング競争は近年激化しており、ASICという高性能なコンピュータでなければマイニングに事実上参加出来ない状態が続いています。このハードルの高さはマイニングの寡占化を招くという批判は前々からあり、これを解決しようとしたのがビットコインゴールドです。
ビットコインゴールドはASICではマイニングができません。これにより、GPUというより安価なコンピュータでのマイニングが現実的なものになります。これにより参入ハードルは下がり、より高度な分散化が達成されることが期待されます。
ビットコインダイヤモンド
ビットコインダイヤモンドは、プライバシーの保護と総発行枚数の増加、取引スピードの向上などを目的に作られた仮想通貨です。
ビットコインの取引データはすべてウェブ上で公開されています。この公開性はビットコインの信頼につながっている半面、プライバシーの欠如にもつながっています。ビットコインダイヤモンドでは取引金額を暗号化することによって、プライバシーをある程度保護します。
また、総発行枚数を2億1000万枚(ビットコインの10倍)とすることによって、1枚あたりの価格を下げて、保有のハードルを下げています。
ユナイテッドビットコイン
ユナイテッドビットコインは、Segwitとブロックサイズの拡大を同時に行った仮想通貨です。Segwitはビットコインで導入されたトランザクション圧縮技術、ブロックサイズ拡大はビットコインキャッシュで導入された技術であり、ユナイテッドビットコインは両者のいいとこどりと言えます。技術的にはQTUMという仮想通貨を参考にしています。
Segwitについては別記事「Segwitとは?」で詳しく解説しています。
スーパービットコイン
スーパービットコインとは、様々な仮想通貨のいいとこ取りをした仮想通貨です。ブロックサイズの拡大、ゼロ知識証明、スマートコントラクト、ライトニング・ネットワークと、優秀な技術がこれでもかと搭載されています。
ライトニングビットコイン
ライトニングビットコインは、ブロック生成スピードが3秒と非常に早い仮想通貨です。ビットコインのブロック生成時間は10分で、これが他の仮想通貨と比べて遅いことが問題視されることがよくありましたが、ライトニングビットコインはそれよりも遥かに早く、高速送金が期待できます。マイニングにはDPoSという仕組みを採用しています。
ビットコインゴッド
ビットコインゴッドは、基本的にはスーパービットコインと似た仮想通貨です。ブロックサイズの拡大、ゼロ知識証明、スマートコントラクト、ライトニング・ネットワークのすべて導入しています。
過去に行われたイーサリアムのハードフォーク一覧
イーサリアムは前述の通り、過去から未来にかけて4回の予定されていたハードフォークを実施していますが、その時には分裂は起きていません。イーサリアムが分裂を起こしたのは2回で、以下の仮想通貨が誕生しています。
通貨名 | 通貨単位 | 発行日 |
---|---|---|
イーサリアムクラシック | ETC | 2016年7月20日 |
イーサリアムゼロ | ETZ | 2018年1月20日 |
イーサリアムクラシック
イーサリアムクラシックとは、THE DAO事件という仮想通貨流出事件を受けて誕生した仮想通貨です。
この事件の発生直後から、イーサリアムのコミュニティでは事件解決に向けた話し合いが行われました。その結果、「ハードフォークを行って流出が起きる前の状態に戻し、流出自体をなかったことにする」という手段が約90%の支持を得たのですが、一方でこれに反対する人もわずかながら存在しました。
反対者の言い分は「少数で話し合って解決するのは中央集権的であり、イーサリアムの理念に反する」というもので、彼らが分裂させたのがイーサリアムクラシックです。
イーサリアムクラシックの基本的な性能はイーサリアムと代わりありませんが、イーサリアムと比べると、コミュニティよりもコードを重視した作りになっています。たとえ正しいと思われる措置であっても、それを少数で話し合って決めるというのは間違っている、というのがイーサリアムクラシックの基本方針です。
また、イーサリアムクラシックは、イーサリアムと比べると拡張性が制限されている代わりに、より安全性を重視しています。どちらも一長一短ですが、今のところはイーサリアムのほうが時価総額が高く、開発も盛んに行われています。
イーサリアムゼロ
イーサリアムゼロは、2018年1月20日に誕生した仮想通貨です。現状、不明瞭な点が多いので、申し訳ございませんが、解説は控えさせていただきます。
ハードフォークによる価格への影響度
ビットコインのハードフォークは度々起きています。基本的に、性能が向上するハードフォークの場合は、ハードフォークが行われる直前から価格は上昇し始めることが多いです。ハードフォークにはリスクもありますが、基本的には性能を向上させる好材料とみなされることが多いためです。
一方、分裂する場合はハードフォーク直前に一旦価格が上昇したあと、ハードフォーク直後に下落する、という流れになることが多いです。直前に価格が上昇するのは、新しい仮想通貨を受け取るためにはもととなる仮想通貨が必要となるためです。ただし、これはあくまでも一般論です。
価格を形成する要因はハードフォークだけではないので、ハードフォークは価格を上昇させると断言することはできません。
2018年ビットコインのハードフォーク予定
ビットコインは2018年以降も様々なハードフォークが行われ、その結果多くの新しい仮想通貨が誕生するに至っています。すべてを追うのは難しいので、代表的なものだけ解説いたします。
ビットコインプライベート(BTCP)
2月28日に誕生した仮想通貨です。Zcashという匿名性の高い仮想通貨を元に作られたZClassicとビットコインのチェーンを繋げて一本にした特殊なもので、匿名性の高さが最大の特徴です。
分裂した通貨の受け取り方法は?
分裂した仮想通貨を受け取るためには、まず分裂前までに分裂元の仮想通貨を購入し、その上で分裂に対応したウォレットに補完する必要があります。分裂にさえ対応していれば、ウェブウォレットでも、デスクトップウォレットでも、あるいは仮想通貨取引所でも構いません。分裂前にはウォレットの公式の発表をチェックすることをおすすめします。